昨日の朝日新聞デジタルのニュースを読んで驚きました。

埼玉県労働組合連合会(埼労連)と有識者がまとめた「普通の生活」のための年代ごとの支出という調査結果。

 

なんと、50代の家族が人並みに暮らすには、月収50万円以上のお金が必要なのですって!

 

「人並みに」の定義がなんとも曖昧なのですが、夫婦と子供二人、そして子供を大学まで進学させるという想定らしいです。

 

これを読んで、「私だけがたくさん使っているんじゃなかった」とホッと胸をなでおろす蘭子。

「そうだよね〜、そうだよね〜、このくらいは必要なんだよ。」と、夫にこの調査結果を見せたくなりました。

 

こちらの調査、埼玉県内で暮らすためには・・と、あるのですが、東京、神奈川、千葉あたりの首都圏なら大体同じようなものでしょう。

日頃、断捨離や節約に励まれている方からすれば、「使い過ぎ」にも見える調査結果ですが、自分の生活を振り返っても意外な出費ばかりが多く、この結果は、かなり近いものだと思えます。

 

人並みの生活、月収50万円必要

 

以下、朝日デジタル版から転載です。

埼玉県内で人並みに暮らすには月約50万円の収入が必要で、子供が大学に入ると支出が急に増え、奨学金がないと成り立たないとする調査結果を、県労働組合連合会(埼労連)と有識者がまとめた。
「賃金の底上げとともに、教育や住宅の負担を下げる政策が必要」と指摘している。

 

調査は、昼食を食べる場所や日ごろの買い物の場所や支出など、日常生活でのお金の使い方を聞く「生活実態調査」と、生活に必要な持ち物を聞く「持ち物財調査」のアンケートを、昨年1月に埼労連の組合員など3千人に依頼し、3カ月で597人(有効回答率約20%)が答えた。

 

その分析で、回答者の7割以上が持つ物を「必需品」とし、それを持つ生活を「普通の生活」と定義。

回答者がよく買い物をしている店などで実際の価格も調べた。

 

「普通の生活」のための年代ごとの支出

 

こうした積算で、次の各モデルの結果が出た。

いずれも夫は正社員で妻はパート勤務、車はない設定。

 

【30代夫婦で小学生と幼稚園児】

さいたま市郊外で月5万5千円の賃貸住宅(2LDK、約43平米)で暮らす1カ月の生活費は

▽食費約10万8千円

▽交通・通信費約3万8千円

▽教育費約2万7千円などの計約43万円となった。

 

たとえば洗濯機は約6万円のものを国税庁の決まりをもとに耐用年数を6年として割り算し、月額を836円とするなどして、家具・家事用品の月額負担は1万8356円と積算した。

 

08年の前回調査と比べ、教育費と教養娯楽費が合計で3万円近く増えたほか、交通・通信費も1万円余り増えるなど、約6万8千円増えた。

この支出のためには、税や社会保険料を加えた額面で、約50万円の月収(年収約599万円)が必要だ。

しかし、厚生労働省の調査によると埼玉県内の30代男性の平均年収は約411万円と、200万円近い開きがある。

 

【40代で中学生と小学生】30代より食費と教育費がそれぞれ約1万円増える一方、教養娯楽費は約1万3千円減るなどした結果、額面の月収は約54万円(年収約647万円)が必要。平均の485万円との差は少し縮まる。

 

【50代で大学生と高校生】東京の私大に通わせる前提で

▽教育費が40代よりも約9万円多い約13万円

▽交通・通信費も同1万1千円多い約5万円と大きく増える。

教養娯楽費を30代より1万7千円余り少ない約2万8千円に抑えるが、全体の支出は約58万円で、税などを加えた額面は約68万円(年収約821万円)と、平均の545万円を276万円上回る。

 

調査をまとめた静岡県立大学短期大学部の中沢秀一准教授は「妻のパートでは足りず、子供は奨学金を借りる。無償の奨学金や住宅補助の制度を充実させないと子供の将来はさらに厳しい」と指摘している。(松浦新)

 

4.17 05:30 朝日新聞デジタル

 

こちらの表を見て、皆さんどう感じられるでしょうか。

食費が高い?いやいや昼食代や外食を減らしたところで、一家四人が食べるとこのくらいでしょうし、家のローン6万なんて安い方でしょう。

 

家から東京まで通うのに、交通費支給ならよいけれど、大学に通う子供がいたら月に1〜2万はかかるでしょうし、スマホやネットなどの通信費で2万はかかる。

主婦だってパートに出かけたりもあるでしょう。

 

何より高いのは教育費だと思います。

大学まで公立に進学したとしても、今や50〜100万単位の授業料なんです。

公立高校だって無償ではありません。

 

さて、2017年一世帯の生活費50万円也を読んだ後に偶然ですが、昭和21年(1946年)に作られた貴重な映像「家計の数学」をYou Tubeで見つけました。

 

70年前の生活費はどうだったのでしょう?

 

「家計の数学〜生活費500圓」

 

 

昭和21年(1946年)、終戦直後の混乱期に、政府がインフレ対策として打ち出した1世帯1ヶ月500円の生活費の非現実性を、当時の物価と人々の生活の実態に照らして描いた映画です。
配給、買い出し、闇市など終戦直後の貴重な映像を多く含んでいます。

 

昭和21年といえば、私の両親はちょうど中学から高校生くらいの年でした。

やっと家族が一緒に住めるようになったとはいえ、食料や物が買えなくて、とても苦労したという話は聞いています。

 

このブログを読まれている方のご両親はもっと若い世代だと思いますが、この映画とても面白いので、ぜひご覧ください。

 

この映画が作られた背景は、政府の強い金融政策があったためです。
「新円切替」とも呼ばれる、この「預金封鎖」とは、以下のような政策です。

 

「預金封鎖」が始まった日の朝日新聞1面

1.金融機関に預けてあるお金を自由に使うことができなくなる(制限がかかる)。
2.給料は500円まで現金でもらえるが、それを超える金額は金融機関に預け入れられる。

参考までに、当時の大卒の勤め人の初任給は400〜500円(参考記事:毎日新聞より)。
3.新しい紙幣(新円)を発行し、この当時流通している10円以上の紙幣(旧円)は、同年3月3日以降は無効になる。

ただし、期限内に金融機関に預け入れすれば、自動的に新紙幣に切り替わる。

 

つまり、市場に出回る現金を極力減らすことで、これ以上のインフレを抑えようとする政府の非常措置だったのです。

 

映画のタイトルの「生活費500円」とは、「預金がほとんどない、共働きでない、500円を大幅に上回る給料をもらっていない世帯は、1ヵ月500円以内で過ごさなくてはなりません」ということを暗に皮肉っているわけです。

 

政府は、「1世帯あたり月500円」で本当に暮らしていけるのか、ちゃんと生活できるということを示すためにモデル家計簿を公開したようですが、それに照らし合わせて検証していくのが、この映像のストーリーです。

 

こちらの動画は前編と後編に分かれています。

【動画】「生計費500円《前編》昭和21年 短編映画」

 

まず、政府が考える1世帯あたりという基準は、夫37歳、 妻31歳、子供は13歳、8歳、4歳の3人の5人家族。

(ここで、もう〜えっ 18歳でもう一人目産んだんだ〜と!(◎_◎;)

そして、旦那さんも24歳でお父さんに〜若すぎ。

というか、終戦直後で24歳の元気な男の人がいたんですね。

 

私が、まずひきつけられたのはこちら

「われわれ、日本人は、今迄あまりに数字で物を考へることをしなかった。

だから数字を出されると直ぐ本当と思ひ勝ちだった」

 

そして

「数字は物ごとを正しく考へるー手段であることを学ばねばならぬ」

 

いや、耳に痛いですね。

 

そして、生活費を、こちらの9つの項目に分けて考えていきます。

 

まず、500円のうち住居費に割り当てられるのは53円。

家賃の想定で35円だそうです。

住居費には家賃の他、修繕費、家具、水道、什器などの支払いも含まれています。

 

例えば、やかんを買い替えようにも、こちらは25円16銭、住居費合計の53円から家賃35円を引いた18円では足りません。

「炊飯釜は44円30銭するので3分の1しか買えません」と、半分が消えてます。

予算の合計はわかりませんが、さまざまなものの値段が紹介されていて興味深いです。

 

映像の3分56秒ごろからは、教育・修養・娯楽費について。

 

まずはラジオ聴取料が2円50銭。

現在のNHKのテレビ受信料のように、ラジオも聴取料を徴収されていたんですね。

新聞購読料は月5円。

ノートや筆記用具など、2人の子供の学用品が月6円。

 

子供の絵本・雑誌が月8円。

真ん中に見えるのは、現在も発売されている「子供の科学」。

1924年(大正13年)創刊です。

 

政府は娯楽費の中に映画代なども含むと言っている、とナレーション。

 

教育・修養・娯楽費は残り2円50銭。

同映画館の観覧料は5円1銭。

3円34銭の料金と1円67銭の入場税(料金の50%)の合計です。

残念ながら政府の考える予算では、この映画は見に行くことができません。

 

中村吉右衛門劇団の歌舞伎公演では、 A席が20円00銭。

B席が8円00銭。

料金と税金が半々で、入場税は100%となっています。

当然、この家族は観ることもできません。

 

映像の4分53秒ごろから交通費の話題となります。

1ヵ月の交通費に割り当てられているのは33円。

 

昭和21年3月23日より有効の新橋ー池袋間の定期券。

東京での定期券の平均額は32円85銭だそうで、そうなると月に使える交通費は、お父さんの通勤定期代でほぼ終わってしまいます。

 

被服費は1世帯、年400円を基準にしているそうで、月にすると33円ほど。

配給はほとんどあてにならず、ボロのままで過ごすしかありません。

 

映像の7分22秒からは、保険・衛生費について。

 

映っているのは銭湯です。

保険・衛生費の月額は39円で、うち入浴は週わずか1回、家族5人で10円。

当時、お風呂の付いている家に住んでいた人は少なかったのでしょう。

週1回しか入れないのはきついですよね。

 

散髪代は子供も入れて、1世帯で月8円だそう。

「これでは子供は頭を半分だけ刈れば、それでおしまいです」とナレーション。
 半分だけ刈られた映像!(◎_◎;)

 

他にも石鹸とちり紙で1円、保険が5円、風邪薬や胃腸薬などの薬代で10円が割り当てられています。

お母さんの化粧品については、諦めるしかないと、化粧品がフェードアウトしていきます。

 

子供が病気をしても、残りは5円なので病院に連れていけません。

ナレーションいわく「病気のほうに家計簿を充分納得してもらう以外には手はありません」って(−_−;)

 

ここから《後編》の映像となります。

 

【動画】「生計費500円《後編》昭和21年 短編映画」

 

嗜好品は合計23円。

お酒が配給として2級酒5合で7円50銭で、タバコは1日5本として6円。

 

嗜好品代からお酒とタバコ代を引くと、残りは9円50銭。

このお金で子供たちにミカンを買ってあげると、8個だけ買えるようです(1ヵ月分)。

それを3人で割ります。

 

光熱費も供給量は決まっていて、電気は20キロ(ワット)、ガスは10立方メートル。

ガスコンロをつけても、この程度の火力で、ナレーションいわく「お湯を沸かす程度でご飯は到底炊けない」と。

 

木炭や薪の1日分はこの程度。

「ぬるいおみおつけと、半煮えのご飯しか食べられない」とナレーションは言います。

 

ここまで見ても、突っ込みどころ満載の映画。

 

さて、そして、生活費で一番大切なのは飲食費です。

政府の想定では月237円。

内訳は主食(お米など)が月100円、副食(おかず)が、農林省の計画通りに配給がされるなら月117円。

ちなみに、戦中・戦後の配給は有償配給であり、政府が無償で配っているわけではありません。

残りは調味料代の20円で、計237円。

闇市の様子も窺えます。

政府の配給で足りない分は、否が応でも闇で買わなくてはなりません。

 

ブラックマーケットの値段なので、当然安くはなく、それほど大きくない皿に載った食料でも10円の値札が付いています。

一番安い闇値で野菜やさつまいもを買ったとしても、1日あたり21円80銭はかかるそうです。

 

月間赤字はなんと604円!!!

 

 

冒頭の新聞に、世帯主は月300円、その他の家族は1人月100円まで預金を引き出すことができるとありますが、戦争で儲けた人以外では、ほとんど預金が残っている人はいないというのが現状だったそうです。

 

仮に預金があるとしても、皆がお金を下ろして使えば、インフレは進むことになり、さらに生活は苦しいものになってしまいます。

 

その結果、待っているのは、飢餓と餓死だけではないでしょうか、とナレーション。

 

それを避ける方法は、「生産を増強」、「配給だけで生活できるようにすること」、「物価を下げること」の3本柱であることは分かり切っているのになぜできないのか!

金持ちや物持ちに味方する政府が悪い、だから労働者諸君よ、みんなで闘おう! という結論で映像は終了。

 

日本政府の「預金封鎖」は、最終的にインフレに歯止めをかけるに至らず、1949年にドッジ・ラインという財政金融引き締め政策が実施されるまでハイパーインフレは続きました。

 

いや〜〜、すごい時代だったんですね。

 

政府が決めた家計費予算ではムリ〜というか、今も同じ。

 

「ばかばかしい戦争をやったおかげで都心ではほとんど住宅という住宅はありません。」といい、政府が決めた家計費予算ではムリだ!と言っているこの映画。

 

というか、この昭和21年というのは、GHQがバリバリ日本を統治していた時間です。

当然、検閲がこの映画にも入っていると思います。

そのことから考えると日本政府の打ち出した政策が、まったく役に立たないということを日本国民に言いたかった、そして政府のいうことではなく、アメリカの言うことの方が正しいのだよ〜というGHQのプロパガンダともとれます。

 

70年前の500円と現在の50万円。

 

プロパガンダはともかくとして、一家の家計の様子が残るこの貴重な映像。

その中で、みな逞しくそしてものすごい経済成長の中で生きてきたわけです。

 

そう考えると、私たちの親世代が、「モノがもったいなくて捨てられない」「なんでも大事にとっておく」という思考が染み付いているのも理解できますよね。

 

そして、物価がどれほど上昇しているのか、現在の日本経済を考えることにもつながります。

 

70年前の夫37歳を四捨五入して40代としてみると、先ほどの埼玉県の調査結果とかなりリンクします。

生活費500円→500,000円、値を1000倍にしてみてください。

 

住居費(光熱費込)53円→53000円

うち、家賃の想定は35円→35000円

炊飯釜は44円30銭→44,300円

新聞購読料は月5円→5,000円

2人の子供の学用品が月6円→6,000円

散髪代は子供も入れて、1世帯で月8円→8,000円

嗜好品は23円→23000円

飲食費は月237円→237,000円

 

飲食費が現在に試算すると高すぎますが、家賃や住居費、そして通信費と交通費、車を持っていて、ここから出すとすると、同じような金額になりそうな気がします。

 

単純計算でこの一家の毎月赤字604円X 12ヶ月で年間7,248円(5人分)の赤字なのですが。

 

さて、昨年の8月に財務省が発表した「国の借金は、国民一人当たり830万円」というニュース

国の借金1053兆円、国民1人当たり830万円 

2016/8/10 16:56 日経QUICKニュース(NQN)

 

一家の赤字と国の赤字は同じではありませんが、借金が多すぎます。

こう考えると今の私たちの生活、そのうちに、かなりのハイパーインフレになってしまう危機を孕んでいるんじゃないかと思い当たります。

 

ハイパーインフレとは、わかりやすく説明すると、いままで500円だったコンビニ弁当が5000円になるようなものです。

給料は同じ30万円で、一日1500円~2000円(月に約5万円)で済んでいたものが、一気に50万円になり、給料では食べていけなくなるようなことです。

(先ほどの映画ですね。)
つまり、モノに頼ってなんでも買って済ませる生活をしていると、このインフレにはとても弱いのではないかと思います。

 

夫の国でも、長らくこのインフレ状態でしたが、結局のところ自給自足のできている人たちは食料に困ることはありませんでしたし、少ないモノで暮らすことができている人こそ、モノを買わずに頭を使って暮らしていたように思います。

 

今の日本のように、モノを買うことで便利さを手に入れてしまうことこそ、経済危機に一番弱いのではないでしょうか。

 

「数字は物ごとを正しく考へるー手段であることを学ばねばならぬ」

 

「なんとなくミニマリスト」ではなく、生活モノに頼らない生活をする、試算をすることってとても必要なのです。