蘭子が大学を出てから就職したのは、S社というファンシー雑貨を販売する会社です。

 

今では東証1部上場企業ですが、入社当時はまだ2部に上場したばかり、社員が急激に増えて大きくなり始めていた頃のことです。

 

社長をはじめ社員も元気いっぱい、私が入った部署は企画・デザイン室だったため、個性的な人たちがたくさんいました。

 

時はバブル真只中、みんなデザイナーズブランドをとっかえひっかえ身につけ、まさにファッションブランド・オンパレードのような状態。

 

でもその中で、すでにミニマリストなファッションを貫いている人がいました。

 

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シンプルで上質なものしか身につけない先輩

 

この会社には20年以上お世話になったのですが、私にとっては人生の学校、大切なことはすべてこの会社で学ばせていただきました。

 

仕事に恵まれるというのは、根本的に人間関係が良い職場なのではないでしょうか?

20年以上という長い間働けたのも、なにより上司、先輩、同僚との人間関係が良好だったから。

とりわけお世話になったのはS先輩でした。

 

入社した80年代、百貨店では西武がパルコを乱立し、コマーシャルは「おいしい生活」を謳っていました。

 

マガジンハウスが全盛だった時代です。

雑誌オリーブやananから抜け出てきたようなファッションで毎日出社する先輩たちは、経済力にものを言わせ新しく出るコレクションごとに服も新調。

 

後輩の私たちは競って後を追うように、なけなしのお給料でファッションブランドの服を買っていました。

 

ところが、そんな中で一人、S先輩はいつもシンプルな格好で通していました。

 

ベースカラーは、黒、紺、グレー、オフホワイト。

Tシャツもセーターもすべてクルーネック、ジーンズは履かずいつもクロップドパンツ、足元はサボサンダルです。

スカート姿は見たことがありませんし、普段の靴はスウェーデンスタイルのサボサンダル。

何かのイベントの時は黒のぺったんこシューズ。

 

アクセサリーは小さなパール。お化粧っ気はなく髪はボブスタイル。

バッグもブランドバッグは持たず、確かL,Lビーンのトートバッグを愛用していたと記憶しています。

 

その頃は、まだユニクロもGAPもありませんでしたから、クルーネックの何かというとラルフ・ローレンとかのコットンセーターなどがポピュラーだったように思います。

 

住まいは会社から徒歩10分ほどのマンション、高校の同級生と結婚し、子供なし。

職住接近なので時間に余裕があり、平日の夜でも近くのスポーツクラブで泳ぐという毎日。

1年に一度は夫婦でハワイに旅行するというライフスタイルを送っていらっしゃいました。

 

このS先輩、飲み会は極力行かずお料理が上手、蘭子はいつもおウチご飯のレシピを教えてもらっていました。

 

シンプルな思考がヒット企画を生む

 

その頃は思考も外見も、雪だるまのように不要なものを着けていた私は、そんなS先輩を見て、もっとお洒落をすればいいのに、遊びに行けばいいのに・・・と不遜にも思っていました。

 

「なんで、いつも同じ形のパンツなんですか?」

→「だって、選ぶ手間がいらないでしょ」

 

「なんで、ハイヒール履かないんですか?」

→「だって、足が痛くなるし、腰が悪くなるからよ」

 

「なんで、アクセサリー買わないんですか?」

→「だって、これが一番何にでも合わせられるでしょ」

 

S先輩の明快な答えは、少し物足りなくもあり、でも今思うと、とてもシンプルなもの。

好きなもの、やりたいこと、身体によいことを知っている・・・とりわけ心がいつもフラットなので、とても明快なのです。

 

企画する商品も、まさにこのシンプルな答えが反映された商品が多かったように思います。

 

 

 

 

 

 

 

担当していたのは、このキャラクターですが、

 

 

 

バブルなこちらのブランドが流行るやいなや、同じような素材のバッグにキャラクターをつけたシリーズを企画。

 

 

ファンシーな雑貨の中で、とても大人っぽいのにもかかわらず、一商品で億を稼ぐ空前絶後のヒット商品となったのです。

 

S先輩からは、小手先でいろいろデザインをひねくりまわしたりするよりも、「シンプルなコンセプトできっちりやりたい商品を作ることが大事」ということを教わりました。

 

このコンセプト、今まで生きてきた自分の中で、ずっと軸にあるような気がします。

 

30年前から存在していたミニマリスト

 

ミニマリストというのは、ここ10年くらいで認識されてきた言葉だと思います。

でも、30年も前から、このコンセプトで生活していた人たちがいたということです。

 

その後、S先輩は30歳を過ぎた頃、

「私がいなくなったら、蘭子はもう、夜ご飯のおかずを決められないんじゃないかと心配だわ。」という言葉を残し、会社を退職してしまいます。

 

企画会社を作って独立したのです。

蘭子は、寂しくて何か迷うといつも会社を抜け出して、この先輩に会いに行っていました。

 

きっと、S先輩はその頃からわかっていたのだと思います。

自分はどんな風に生きたい? どんな自分で在りたいか?ということが。

 

遅まきながら、私が「真のミニマリスト」を目指すとした時、まっさきに頭に浮かんだのはこのS先輩。

 

何かに迷った時、ブレそうになった時はいつも「S先輩なら、どうするかな?」と考えると、無駄を省いた答えが出て、意外とあっさり考えがまとまるのです。

 

言うなれば、私の人生のお手本。

シンプルで上質な生活を送る人生の先輩。

 

さて、みなさんには、人生のお手本となる人はいますか?